第三次世界大戦回避か。トランプ報復の報復には言及せず

 イランがミサイル報復した。しかし米軍兵に被害はでなかった。トランプ大統領の会見によると、今回のイラン報復では、第三次世界大戦には、発展しないようだ。

 イランが日本時間8日午前7時半ごろ、米軍が駐留するイラク西部のアサド空軍基地にミサイルを14発ぶち込んだ。イランは、アメリカ軍の攻撃で革命防衛隊のソレイマニ司令官が殺害され、報復を宣言していた。イイランは、今回の攻撃でアメリカ人80人を殺したと発表したが、実際は、米兵に一人の被害も出ていなかった。
 そして、この攻撃後イランは、米政府に対して、「米国がイランに反撃しなければ、イランは攻撃を継続しない」との書簡を出していた。

 トランプ大統領のイランに対する報復措置の基準というのは、米国軍人の生命に被害が出るかどうかというもの。ガセムの時は、米兵と民間人が殺されてすぐ、ガセム・ソレイマニ司令官を殺害したことから明白になっていた。以前、安倍首相が、イランを訪問している際、ホルムズ海峡で、日本タンカーが攻撃されたさいも、200億もするアメリカのドローン(無人偵察機)を19年6月20日にホルムズ海峡上空で撃墜したときも報復しなかった。それに比べて、今回のイラクに駐留している米軍兵と米国籍の民間人が殺された事件は、全く対応が異なっていた。トランプ大統領は、すぐさま、ピンポイントでソレイマニ司令官が殺害する報復に出た。
 しかし、殺害した相手は、イラン、牽いては、イラクレバノン、シリア、イエメンのイスラムシーア派勢力の英雄。何より、イランの国民は、暴発しかねない悲しみ様になった。なので、イランの報復行動というのは、必至だった。

 イランは、確かにガセム司令官葬式後すぐに、イラクに駐留する米軍にミサイル攻撃で報復した。しかし、トランプ大統領の報復行動の基準に合わせたかのように、米兵を一人も殺さなかった。イランの最高指導者ハメネイ師は8日、首都テヘランで演説し、同日未明に行われたイラク国内の駐留米軍基地などへの弾道ミサイル攻撃について「米国に平手打ちを浴びせた」と述べ、強気の姿勢を示した。が、イランのザリフ外相が言っているように今回の攻撃は、「国連憲章に基づく自衛権の行使で、釣り合いの取れた措置だった」との内容から、一定の報復をしたことで、国内の暴発の鎮静化を図ったと見ることが出来る。

 これで収まればいいけど・・。

 トランプ大統領は8日夜、ホワイトハウスで国民に向けて演説し「わが国の兵士は全員無事であり、われわれの軍事基地における被害は最小限にとどまった。われらが偉大なる米軍は、何に対しても備えができている」と述べた。
 また「イランは身を引いているようだ。これは全当事者にとって良いことであり、世界にとって非常に良いことだ。米国人やイラク人の命は失われなかった」と話した。
 トランプ大統領は、イランに対して直ちに「厳しい追加制裁」を科すと表明したが、米国時間7日のミサイル攻撃に対する報復の可能性については言及しなかった。

 トランプ大統領にとっても、これで幕引きになることを願っているようだ。それと同時に、NATO加盟各国を対イランに巻き込む発言をした。
「私はきょう、北大西洋条約機構NATO)に対し、中東のプロセスへの関与を大幅に深めるよう要請する」
 ドイツなんかは、こうなることが目に見えていたので、周辺国に一時NATO参戦軍を引いている。だけど、トランプの思惑通り、イランのミサイル報復をイギリスやフランスの核合意組が非難している。
 トランプ大統領は、米国原産のシェールガスにより中東の石油への米国の依存度が低下したことを自分の経済政策によって成されたと自画自賛し、中東での米政府の「戦略上の優先事項」が変わったと説明。この後始末をNATO軍各国に分散して当たらせたい考えだ。
 つまり、「もう中東で矢面に立つのは嫌だから、今回の件で、イランが無茶なことをしてこない限り、うちも、それに合わせて引きたい」と、言った。

 今後の見通しだが、イランは、米国にミサイル攻撃で報復したことで、イラン国内では面子の立つことをしたので、一般市民を落ち着かせることが出来ただろう。一般市民はね。しかし、イラン革命防衛隊は、そうはいかないだろう。そうは言っても、米国相手に、大規模な戦闘は、分が悪すぎる。表立って正式には、大人しくなると思う。しかし、中身は全く逆だろう。イラン革命防衛隊は、12万も兵士がいる。イラン経済を一部牛耳っているので、経済力もある。なに画策するのは間違いない。
 イランという国もそうだ。ここに至っては、核合意は、無いものと一緒になる可能性が高い。イラン市民がどれだけアメリカの経済制裁に我慢できるか分からないが、イランは、今後、核開発を推進するだろう。これに北朝鮮が協力したら、金正恩は、ガセム司令官の二の舞。経済だと、原油お得意様の中国が、助けようものなら、アメリカは、ぐいぐい中国の首を絞めることになる。

 イランのザリフ外相が言っているように、これで、釣り合いの取れた報復をしたとして、この件に関してアメリカが、更なる報復措置を取らなかったら、これ以上の報復合戦はないと言う声明にあるように、トランプ大統領が報復合戦をしなかったら、今回の事件は、これで幕引きされることになる。

 そうなれば、第三次世界大戦には発展しない。本当にそうなることを願う。